【課題】血行力学分析に基づいて特定の症候群を検知するシステムを提供する. 【解決手段】システムは,血行力学データを表す血行力学データを得て,血行力学波形に移動平均フィルタリングを行うことによってフィルタリングされた波形を得て,谷を判断することによってフィルタリング波形における波形セグメントを判断し,収縮期のピークを判断することによって波形セグメントの第1の部分と第2の部分とを判断し,第2の部分の滑らかさを判断し,第2の部分の滑らかさに基づいて血行力学波形と特定の症候群との関係を判断し,検知結果を生成する. 【選択図】図2
公報種類 | 登録実用新案公報(U) | 申請日 | 20220708 | 公告日 | 20220905 | 申請號 | JP2022002267 | 公告號 | JP3239004U | 申請人 | 昌泰科醫股▲ふん▼有限公司 (TW); 國立臺北科技大學 (TW) | 發明人 | 黄明▲くん▼ (TW); 王建人 (TW); 劉伯恩 (TW); 趙書宏 (TW); 劉英蘭 (TW); 張俊揚 (TW); 曾今坤 (TW); 莊子怡 (TW); 趙雅▲うぇん▼ (TW); 劉宣佑 (TW); 呉谷能 (TW); 林君玲 (TW); 黄育賢 (TW); 王三輔 (TW); 魏一勤 (TW); 陳福國 (TW) | 代理人 | 八田国際特許業務法人 | 優先權 | TW 111106430 20220222 | IPC | A61B 5/02(2006.01); A61B 5/16(2006.01); A61B 10/00(2006.01) | CPC | A61B 5/7239(2013.01); A61B 5/7278(2013.01); A61B 5/7282(2013.01); A61B 5/725(2013.01); A61B 5/02416(2013.01); A61B 5/4854(2013.01); A61B 5/4854(2013.01); A61B 5/02116(2013.01); A61B 5/002(2013.01); A61B 5/02416(2013.01); A61B 5/7225(2013.01) | FI | A61B5/02 310A; A61B10/00 W; A61B5/16 130; A61B10/00 V | 類別碼 | U |
1.血行力学分析に基づいて特定の症候群を検知するシステムであって, 被検者に着用されるように構成される血行力学センサと,前記血行力学センサに信号的に接続するように構成される処理装置と,を備え, 前記血行力学センサは, 第1の接続モジュールと, 前記第1の接続モジュールに電気的に接続し,前記被検者の血行力学状態を検知することにより,血行力学波形を表し且つ前記被検者に関連する血行力学データを生成するように構成される,血行力学センシングモジュールと,を含み, 前記処理装置は, 前記第1の接続モジュールに信号的に接続するように構成される,第2の接続モジュールと, 前記第2の接続モジュールに電気的に接続する,プロセッサと, 前記プロセッサに電気的に接続する,出力モジュールと,を含み, 前記プロセッサは, 前記第2の接続モジュールを介して,前記血行力学センサから前記血行力学データを得て,前記血行力学波形に対して第1の移動平均フィルタリングを行って,前記血行力学波形に対応する第1のフィルタリングされた波形を得るように構成される,フィルタリング部と, 前記フィルタリング部に電気的に接続し,スライディングウィンドウアルゴリズムを使用して,それぞれが前記血行力学波形の拡張期の底である前記第1のフィルタリングされた波形における複数の谷を判断することにより,隣接する2つの前記谷の間にそれぞれある前記第1のフィルタリングされた波形の複数の波形セグメントを判断し,そして,前記波形セグメントのそれぞれに対して,前記波形セグメント内の山であり且つ前記波形セグメントの始点に最も近い前記波形セグメント内の収縮期のピークを判断することにより,前記波形セグメントが,前記波形セグメントの前記始点から前記収縮期のピークまでである第1の部分と,残りの前記波形セグメントである第2の部分と,を有するようになるよう構成される,波形セグメント特定部と, 前記波形セグメント特定部に電気的に接続し,前記波形セグメントの前記第2の部分の滑らかさを判断するように構成される,滑らかさ判断部と, 前記滑らかさ判断部に電気的に接続し,前記波形セグメントの前記第2の部分の前記滑らかさに基づいて前記血行力学波形と特定の症候群との関係を判断し,判断された前記関係に基づいて前記被検者が前記特定の症候群に罹患している可能性を示す検知結果を生成し,前記検知結果を出力するように前記出力モジュールを制御するように構成される,検知結果生成部と,を含む, システム.
2.前記第1の接続モジュールと前記第2の接続モジュールとは,短距離無線通信を介して,互いに信号的に接続するように構成される,請求項1に記載のシステム.
3.前記第1の接続モジュールと前記第2の接続モジュールとは,ブルートゥース及び近距離無線通信(NFC)の少なくとも1つを介して,互いに信号的に接続するように構成される,請求項1に記載のシステム.
4.前記プロセッサの前記検知結果生成部は,前記波形セグメントの前記第2の部分の前記滑らかさに基づいて,前記血行力学波形と中医学における肝火上炎及び心火上炎のうちの1つとの関係を判断するように構成される,請求項1に記載のシステム.
5.前記プロセッサの前記検知結果生成部は, 前記波形セグメントの前記第2の部分のすべてにおける滑らかではない前記波形セグメントの前記第2の部分のパーセンテージが閾値パーセンテージ以上であると判断された場合に,前記血行力学波形が前記特定の症候群に高度に関連すると判断し, 前記血行力学波形が前記特定の症候群に高度に関連すると判断された場合に,前記被検者が前記特定の症候群に罹患している可能性が高いことを示す前記検知結果を生成するように構成される,請求項1に記載のシステム.
6.前記プロセッサの前記検知結果生成部は,前記波形セグメントの前記第2の部分の少なくとも50%が滑らかではないと判断された場合に,前記血行力学波形が前記特定の症候群に高度に関連すると判断するように構成される,請求項5に記載のシステム.
7.前記プロセッサの前記滑らかさ判断部は, 前記血行力学波形に対して第2の移動平均フィルタリングを行って,前記血行力学波形に対応し且つ前記第1のフィルタリングされた波形とは異なる第2のフィルタリングされた波形を得て, 前記第1のフィルタリングされた波形及び前記第2のフィルタリングされた波形の一方から,前記第1のフィルタリングされた波形及び前記第2のフィルタリングされた波形の他の一方を減算することにより,減算された波形を得て,前記減算された波形は,前記第1のフィルタリングされた波形の前記波形セグメントそれぞれの前記第2の部分にそれぞれ対応する複数の減算された波形セグメントを含み, 前記減算された波形の前記減算された波形セグメントのそれぞれに対して,標準偏差を計算し, 前記減算された波形の前記減算された波形セグメントの前記標準偏差の平均値を計算し, 計算された前記平均値と閾値と比較し,計算された前記平均値が前記閾値より大きい場合に,前記第1のフィルタリングされた波形の前記波形セグメントの前記第2の部分の少なくとも前記閾値パーセンテージ分が滑らかではないと判断するように構成される,請求項5に記載のシステム.
8.前記閾値は0.005である,請求項7に記載のシステム.
9.前記プロセッサの前記滑らかさ判断部が行った前記第2の移動平均フィルタリングが用いたフィルタリング基準は,前記プロセッサの前記フィルタリング部が行った前記第1の移動平均フィルタリングが用いたフィルタリング基準とは異なる,請求項7に記載のシステム.
10.前記血行力学データは,光電式容積脈波測定(PPG)信号である,請求項1に記載のシステム.
11.前記プロセッサは,前記波形セグメント特定部に電気的に接続する評価結果生成部をさらに含み, 前記評価結果生成部は, 前記第1のフィルタリングされた波形の前記波形セグメントのそれぞれに対して,Ramer-Douglas-Peuckerアルゴリズムを用いて,前記波形セグメントの近似曲線を得て, 前記第1のフィルタリングされた波形の前記波形セグメントのそれぞれに対して,前記波形セグメントの前記近似曲線に基づいて前記波形セグメントが重複切痕と重複波とを含むかどうかを判断することにより,確認結果を決定し, 決定された前記確認結果に基づいて,前記被検者の血管弾性及び深い眠りの質の少なくとも1つに関連する評価結果を生成するように構成される,請求項1に記載のシステム.
12.前記プロセッサの前記フィルタリング部は,バターワース帯域フィルターを用いて,前記血行力学波形に対してゼロ位相デジタルフィルタリングを実行することにより,前記第1の移動平均フィルタリングを行うように構成される,請求項1に記載のシステム. 【0001】 本考案は,血行力学分析に関し,特に,血行力学分析に基づいて特定の症候群を検知するシステムに関する.
【0002】 血行力学分析は,一般に,高血圧,アテローム性動脈硬化,心不全などの特定の心血管疾患を検知するために用いられる.
【0003】 中国特許出願公開第111657884号明細書
【0004】 血行力学分析は,現代医学では一般的に利用されているが,伝統的な中医学では利用されていない.従って,本考案の目的は,血行力学分析を用いて,肝火上炎(かんかじょうえん),心火上炎(しんかじょうえん)などの中医学における症候群を容易に検知することができるシステムを提供することにある.
【0005】 本考案の一の実施形態によれば,血行力学分析に基づいて特定の症候群を検知するシステムは,被検者に着用されるように構成される血行力学センサと,血行力学センサに信号的に接続するように構成される処理装置と,を含む.
【0006】 血行力学センサは,第1の接続モジュールと,第1の接続モジュールに電気的に接続し,被検者の血行力学状態を検知することにより,血行力学波形を表し且つ被検者に関連する血行力学データを生成するように構成される血行力学センシングモジュールと,を含む.
【0007】 処理装置は,第1の接続モジュールに信号的に接続するように構成される第2の接続モジュールと,第2の接続モジュールに電気的に接続するプロセッサと,プロセッサに電気的に接続する出力モジュールと,を含む.
【0008】 プロセッサは,フィルタリング部と,フィルタリング部に電気的に接続する波形セグメント部と,波形セグメント部に電気的に接続する滑らかさ判断部と,滑らかさ判断部に電気的に接続する検知結果生成部と,を含む.
【0009】 フィルタリング部は,血行力学センサから血行力学データを得て,血行力学波形に対して第1の移動平均フィルタリングを行って,血行力学波形に対応する第1のフィルタリングされた波形を得るように構成される.
【0010】 波形セグメント特定部は,スライディングウィンドウアルゴリズムを使用して,それぞれは血行力学波形の拡張期の底である第1のフィルタリングされた波形における複数の谷を判断することにより,隣接する2つの谷の間にそれぞれある第1のフィルタリングされた波形の複数の波形セグメントを判断し,そして,波形セグメントのそれぞれに対して,波形セグメント内の山であり且つ波形セグメントの始点に最も近い波形セグメント内の収縮期のピークを判断することにより,波形セグメントが,波形セグメントの始点から収縮期のピークまでである第1の部分と,残りの波形セグメントである第2の部分と,を有するようになるよう構成される.
【0011】 滑らかさ判断部は,波形セグメントの第2の部分の滑らかさを判断するように構成される.
【0012】 検知結果生成部は,波形セグメントの第2の部分の滑らかさに基づいて血行力学波形と特定の症候群との関係を判断し,判断された関係に基づいて被検者が特定の症候群に罹患している可能性を示す検知結果を生成し,検知結果を出力するように出力モジュールを制御するように構成される.
【0013】 本考案によれば,血行力学センサにより生成された被検者に関連する血行力学データに基づいて被検者が特定の症候群に罹患している可能性を容易に検知することができる.
【0014】 本考案の他の特徴及び利点は,添付の図面を参照する以下の実施形態の詳細な説明において明白になる.
【0015】 本考案の一の実施形態に係るシステムが例示的に示されているブロック図である.
同実施形態のプロセッサが行う処理が例示的に示されているフロー図である.
同実施形態の波形セグメントに対応するパルス周期が例示的に示されている模式図である.
同実施形態のプロセッサの滑らかさ判断部が行う処理が例示的に示されているフロー図である.
同実施形態の健康な人に関連する第1のフィルタリングされた波形の一部の例示的な模式図である.
同実施形態の肝火上炎に関連する第1のフィルタリングされた波形の一部の例示的な模式図である.
同実施形態の第1のフィルタリングされた波形の一部の例示的な模式図である.
同実施形態の第1のフィルタリングされた波形の一部の例示的な模式図である.
同実施形態の第1のフィルタリングされた波形の一部の例示的な模式図である.
同実施形態の第1のフィルタリングされた波形の一部の例示的な模式図である.
【0016】 本考案をより詳細に説明する前に,適切と考えられる場合において,参照符号または参照符号の末端部は,同様の特性を有し得る対応のまたは類似の要素を示すために各図面間で繰り返し用いられることに留意されたい.
【0017】 図1は,本考案の一の実施形態に係る,血行力学分析に基づいて特定の症候群を検知するシステム100が例示的に示されているブロック図である.システム100は,互いに信号的に接続する血行力学センサ110及び処理装置120を含む.いくつかの実施形態において,血行力学センサ110及び処理装置120は,互いに電気的に接続する異なる装置であってもよく,又は単一の装置に統合されてもよい.
【0018】 血行力学センサ110は,被検者(例えば,被検者の体)に着用されるように構成される.血行力学センサ110は,第1の接続モジュール111と,被検者上に配置されるように構成される血行力学センシングモジュール112と,を含む.第1の接続モジュール111は,少なくとも1つの通信技術に対応する.少なくとも1つの通信技術は,インターネット,又は無線通信技術(例えば,ブルートゥース(登録商標),近距離無線通信(NFC)など)を含んでもよいが,これらに限定されない.血行力学センシングモジュール112は,被検者の血行力学状態を検知することにより,血行力学波形を表し且つ被検者に関連する血行力学データを生成するように構成される.具体的には,血行力学センシングモジュール112は,被検者の心臓の機械的動作及び血流を検知し,検知された機械的動作に基づいて血行力学データを生成するように構成される.本考案の一実施形態によれば,血行力学センサ110は例えば光電式容積脈波(PhotoPlethysmoGram,PPG)センサであり,PPGセンサにより生成された血行力学データは例えばPPG信号である.血行力学センサ110は,生成された血行力学データを,第1の接続モジュール111を介して処理装置120に出力するようにさらに構成される.
【0019】 処理装置120は,スマートフォン,パーソナルコンピュータ(PC),ラップトップコンピュータ,タブレットコンピュータ,ウルトラモバイルPC(UMPC),パーソナルデジタルアシスタント(PDA),又は,クラウドサーバーであってもよい.処理装置120は,第2の接続モジュール122と,出力モジュール124と,第2の接続モジュール122及び出力モジュール124に電気的に接続するプロセッサ123と,を含む.第2の接続モジュール122も,少なくとも1つの通信技術(例えば,インターネット,無線通信技術)に対応する.第2の接続モジュール122は,少なくとも1つの通信技術を介して,血行力学センサ110の第1の接続モジュール111に信号的に接続するように構成されることにより,処理装置120は血行力学センサ110から血行力学データを受信し,受信した血行力学データを分析することができる.プロセッサ123は,血行力学分析に基づいて特定の症候群(例えば,中医学における肝火上炎または心火上炎)を検知するように構成され,具体的には,フィルタリング部と,フィルタリング部に電気的に接続する波形セグメント特定部と,波形セグメント特定部に電気的に接続する滑らかさ判断部と,滑らかさ判断部に電気的に接続する検知結果生成部と,波形セグメント特定部に電気的に接続する評価結果判断部と,を含む.なお,中医学において,肝火上炎とは,イライラして怒りっぽい,頭痛,めまい,潮騒のような耳鳴り,顔面紅潮,目の充血,口が苦い,不眠,鼻血,月経過多,便秘,尿の色が濃いなどの症状を呈する症候群であり,心火上炎とは,不眠,夢をよく見る,じっとしていられない,顔面紅潮,口や舌に瘡が生じる,尿の色が濃い,排尿痛,尿しぶり,便秘などの症状を呈する症候群である.出力モジュール124は,プロセッサ123により生成された検知結果を視覚的に又は聴覚的に出力するようにプロセッサ123により制御される.処理装置120がラップトップコンピュータである一実施形態において,第2の接続モジュール122は通信モジュールであり,プロセッサ123は中央処理装置(CPU)であり,出力モジュール124はラップトップコンピュータのスクリーン及びスピーカーである.なお,処理装置120が記憶モジュールを含み,プロセッサ123が含む上記各部の機能をプロセッサ123により読み込まれて実現可能にするアプリケーションを記憶モジュールに保存するようにしてもよい.
【0020】 図2は,血行力学分析に基づいて特定の症候群を検知するように,プロセッサ123が行う処理が例示的に示されているフロー図である.図2に示すように,プロセッサ123が行う処理は一例として,ステップ21からステップ29を含む.
【0021】 ステップ21において,プロセッサ123のフィルタリング部は,被検者に着用されている血行力学センサ110により生成された血行力学データを,第2の接続モジュール122を介して得る.血行力学データは,血行力学波形を表し,且つ,被検者に関連する.血行力学センサ110がPPGセンサである一実施形態において,フィルタリング部が得る血行力学データはPPG信号である.
【0022】 ステップ22において,プロセッサ123のフィルタリング部は,血行力学波形に対して,第1の移動平均フィルタリングを行って,血行力学波形に対応する第1のフィルタリングされた波形を得る.一実施形態において,フィルタリング部は,無限インパルス応答(IIR)バターワース帯域フィルターを用いて,血行力学データに対してゼロ位相デジタルフィルタリングを実行することにより,第1の移動平均フィルタリングを行って,周波数範囲が0.5Hzから15Hzにあるフィルタリング基準を用いたバターワース帯域フィルターを用いて第1のフィルタリングされた波形を得る.
【0023】 ステップ23において,プロセッサ123の波形セグメント特定部は,それぞれ心拍間隔の拡張期を表す血行力学波形の拡張期の底である第1のフィルタリングされた波形における複数の谷を判断することにより,隣接する2つの谷の間にそれぞれあってパルス周期(心周期とも呼ばれる)にそれぞれ対応する第1のフィルタリングされた波形の複数の波形セグメントを判断する.特に,いくつかの実施形態において,波形セグメント特定部は,スライディングウィンドウアルゴリズムを使用して谷を判断することによって,波形セグメントを判断する.具体的には,波形セグメント特定部は,特定の長さ(例えば,10秒)を有するウィンドウを定義し,ウィンドウを第1のフィルタリングされた波形の複数の部分にそれぞれ複数回使用し,ウィンドウを第1のフィルタリングされた波形の一の部分に使用するたびに,ウィンドウ範囲内の第1のフィルタリングされた波形における1階微分値が0である最も低いデータポイントを谷として見つけ出すことにより,スライディングウィンドウアルゴリズムを実行する.ウィンドウは,最初に第1のフィルタリングされた波形の始まりに使用し,第1のフィルタリングされた波形の終わりに到達するまで,第1のフィルタリングされた波形の終わりに向かって徐々に移動する.通常のパルス周期は,約0.3秒から1.5秒の間の範囲内にあることが知られている.判断された谷の間隔がこの範囲内にない場合に,ウィンドウの長さを調整し(例えば,0.5秒短縮する),長さが調整されたウィンドウを用いてステップ23を繰り返す.
【0024】 ステップ23後は,特定の症候群を検知する第1の手順と,血管弾性及び前日の夜の睡眠に関する深い眠りの質を評価する第2の手順と,を実行する.第1の手順はステップ24からステップ26を含み,第2の手順はステップ27からステップ29を含む.図2には,第1の手順及び第2の手順がマルチタスクで同時に実行されるように示されているが,本考案はこれに限定されないことに留意されたい.すなわち,第2の手順は第1の手順の前または後に実行されてもよい.
【0025】 ステップ24において,プロセッサ123の波形セグメント特定部は,波形セグメントのそれぞれに対して,波形セグメント内の山であり且つ波形セグメントの始点に最も近い波形セグメント内の収縮期のピークを判断することにより,波形セグメントを収縮期のピークに基づいて第1の部分と第2の部分とに区切ることができる.具体的には,第1の部分は波形セグメントの始点から収縮期のピークまでであり,第2の部分は残りの波形セグメントである.
【0026】 図3には,パルス周期に対応する波形セグメントW(複数の波形セグメントのうちの一つ)が例示的に示され,波形セグメントWは,時刻t1に始点P1,時刻t2に収縮期のピークP3,及び時刻t3に終点P2を有し,始点P1及び終点P2は隣接する拡張期の底であり,拡張期のピークP3は波形セグメントW内の最も高いデータポイントである.波形セグメントWは,第1の部分W1及び第2の部分W2からなる.パルス周期は,第1の部分W1に対応する第1の時間T1(時刻t1から時刻t2)及び第2の部分W2に対応する第2の時間T2(時刻t2から時刻t3)からなる時間T(時刻t1から時刻t3)を有する.
【0027】 ステップ25において,プロセッサ123の滑らかさ判断部は,波形セグメントの第2の部分の滑らかさを判断する.いくつかの実施形態によれば,ステップ25は図4に示されているサブステップ41からサブステップ47を含んでもよい.
【0028】 図4を参照すると,サブステップ41において,プロセッサ123の滑らかさ判断部は,血行力学波形に対して第2の移動平均フィルタリングを行って,血行力学波形に対応し且つステップ22で得た第1のフィルタリングされた波形とは異なる第2のフィルタリングされた波形を得る.第2の移動平均フィルタリングは,ステップ22で行う第1の移動平均フィルタリングと同じように行うが,ステップ22で使用するフィルタリング基準とは異なるフィルタリング基準を使用して行う.いくつかの実施形態によれば,第1の周波数範囲であるフィルタリング基準を使用して第1のフィルタリングされた波形を得る場合に,第1の周波数範囲より広い第2の周波数範囲を使用して第2のフィルタリングされた波形を得てもよい.例えば,一実施形態において,第1のフィルタリングされた波形は0.5Hzから15Hzの周波数範囲であるフィルタリング基準を使用して得て,第2のフィルタリングされた波形は0.5Hzから100Hzの周波数範囲を使用して得る.
【0029】 サブステップ42において,プロセッサ123の滑らかさ判断部は,第1のフィルタリングされた波形及び第2のフィルタリングされた波形の一方から,第1のフィルタリングされた波形及び第2のフィルタリングされた波形の他の一方を減算することにより,減算された波形を得る.減算された波形は,第1のフィルタリングされた波形の波形セグメントそれぞれの第2の部分にそれぞれ対応する複数の減算された波形セグメントを含む.
【0030】 サブステップ43において,プロセッサ123の滑らかさ判断部は,減算された波形の減算された波形セグメントのそれぞれに対して,減算された波形セグメントにおけるデータポイントの大きさの標準偏差を計算する.
【0031】 サブステップ44において,プロセッサ123の滑らかさ判断部は,減算された波形セグメントの標準偏差の平均値を計算する.
【0032】 サブステップ45において,プロセッサ123の滑らかさ判断部は,計算された平均値と閾値とを比較することにより,平均値が閾値より大きいかどうかを判断する.
【0033】 サブステップ45において平均値が閾値より大きいと判断された場合に,手順はサブステップ46へ進み,そうでない場合に,サブステップ47へ進む.
【0034】 平均値が閾値より大きいと判断された場合に,サブステップ46において,プロセッサ123の滑らかさ判断部は,波形セグメントの第2の部分のすべてにおける滑らかではない波形セグメントの第2の部分のパーセンテージ(以下,「滑らかではない第2の部分のパーセンテージ」と称する)が,閾値パーセンテージ以上であると判断する.すなわち,第1のフィルタリングされた波形の波形セグメントの第2の部分の少なくとも閾値パーセンテージ分が滑らかではない.
【0035】 平均値が閾値より大きくないと判断された場合に,サブステップ47において,プロセッサの123の滑らかさ判断部は,滑らかではない第2の部分のパーセンテージが閾値パーセンテージより小さいと判断する.
【0036】 一実施形態において,サブステップ45で使用する閾値は0.005であり,閾値パーセンテージは50%であるが,本考案はこれに限定されない.
【0037】 図2へ戻り,ステップ25において第2の部分の滑らかさを判断した後,ステップ26において,プロセッサ123の検知結果生成部は,波形セグメントの第2の部分の滑らかさに基づいて血行力学波形と特定の症候群との関係を判断し,判断された関係に基づいて被検者が特定の症候群に罹患している可能性を示す検知結果を生成し,検知結果を視覚的にまたは聴覚的に出力するように出力モジュール124を制御し,これによって,医療関係者は被検者に関連する診断を下すことが容易になる.具体的には,滑らかではない第2の部分のパーセンテージが閾値パーセンテージ以上であると判断された場合に,検知結果生成部は血行力学波形は特定の症候群に高度に関連すると判断し,その後,出力モジュール124を制御して,被検者が特定の症候群に罹患している可能性が高いことを示す検知結果を出力させる.その一方,滑らかではない第2の部分のパーセンテージが閾値パーセンテージより小さいと判断された場合に,検知結果生成部は血行力学波形は特定の症候群に高度に関連するものではないと判断し,その後,出力モジュール124を制御して,被検者が特定の症候群に罹患している可能性が低いことを示す検知結果を出力させる.プロセッサ123の検知結果生成部が処理装置120の内部または外部にあるモニター(図示せず)を制御するいくつかの実施形態によれば,プロセッサ123が血行力学波形が肝火上炎または心火上炎である症候群に関連すると判断した後,プロセッサ123は特定の症候群が検知されたことを示すメッセージを表示するようにモニターを制御することができる.プロセッサ123の検知結果生成部が処理装置120の内部または外部にあるスピーカー(図示せず)を制御するいくつかの実施形態によれば,プロセッサ123が血行力学波形が特定の症候群に関連すると判断した後,プロセッサ123は特定の症候群が検知されたことを示す音声信号を出力するようにスピーカーを制御することができる.メッセージまたは音声信号を発信することで,中医師はこれを参考に,肝火上炎または心火上炎の診断を下し,肝火上炎または心火上炎と診断された被検者に対応する治療を決定することができるようになる.
【0038】 図5には,健康な人(すなわち,肝火上炎または心火上炎のない人)に関連する血行力学波形から得られた第1のフィルタリングされた波形の一部が例示的に示されている.図5に示されている第1のフィルタリングされた波形の波形セグメントの第2の部分は,滑らかであることが分かる.
【0039】 図6には,肝火上炎に高度に関連する血行力学波形から得られた第1のフィルタリングされた波形の一部が例示的に示されている.図6に示されている第1のフィルタリングされた波形の波形セグメントの第2の部分は,ごつごつしており,滑らかではないことが分かる.また,ごつごつしている波形セグメントは,中医学において,「弦脈(げんみゃく)」に関連しており,肝火上炎または心火上炎を引き起こす長時間の夜更かしや良い深い眠りの欠如に関連している.
【0040】 図2へ戻り,血管弾性及び前日の夜の睡眠に関連する深い眠りの質に関連する第2の手順は,ステップ27からステップ29を含む.ステップ27において,プロセッサ123の評価結果生成部は,ステップ22で得た第1のフィルタリングされた波形の波形セグメントのそれぞれに対して,Ramer-Douglas-Peuckerアルゴリズムを用いて,波形セグメントの近似曲線を得る.いくつかの実施形態によれば,第1のフィルタリングされた波形の代わりに,ステップ25のサブステップ41で得た第2のフィルタリングされた波形に対して,Ramer-Douglas-Peuckerアルゴリズムを用いて,近似曲線を得てもよい.
【0041】 ステップ28において,プロセッサ123の評価結果生成部は,第1のフィルタリングされた波形の波形セグメントのそれぞれに対して,波形セグメントの近似曲線に基づいて波形セグメントが重複切痕と重複波(dicrotic pulse)とを含むかどうかを判断することにより,確認結果を決定する.いくつかの実施形態によれば,Abhishek Chakrabortyらによる「A Robust PPG Time Plane Feature Extraction Algorithm for Health Monitoring Application」と題する文章に基づいて(例えば,該文章に基づいて構成されるアルゴリズムを使用する),重複切痕及び重複波を判断してもよい.確認結果は,いずれの波形セグメントも重複切痕及び重複波を含まないこと,又は少なくとも一部の波形セグメントが重複切痕及び重複波を含むことを示す場合がある.
【0042】 ステップ29において,プロセッサ123の評価結果生成部は,ステップ28において決定された確認結果に基づいて,被検者の血管弾性及び前日の夜の睡眠に関連する深い眠りの質の少なくとも1つに関連する評価結果を生成し,出力モジュール124を制御して,評価結果を視覚的に又は聴覚的に出力させる.
【0043】 具体的には,確認結果がいずれの波形セグメントも重複切痕及び重複波を含まないことを示す場合に,評価結果生成部により生成された評価結果は血管硬化(又は,低血管弾性)を示す.図7には,血管硬化に関連する血行力学波形から得られた第1のフィルタリングされた波形の一部が例示的に示されており,収縮期のピークP3及び拡張期の底P1が表記されている.
【0044】 その一方,確認結果が少なくとも一部の波形セグメントが重複切痕及び重複波を含むことを示す場合に,波形セグメントにおける重複切痕のそれぞれに対して,プロセッサ123は,重複切痕の底部にあるターニングポイントである切痕点(notch point)を探し出し,重複切痕に対して探し出した切痕点の大きさの平均値を計算し,計算された平均値に基づいて深い眠りの質を評価する.さらに,プロセッサ123の評価結果生成部は,波形セグメントにおける重複波のそれぞれに対して,重複波の前縁の勾配を判断し,重複波に対して判断された勾配に基づいて血管弾性を評価する.いくつかの実施形態において,評価結果生成部は,切痕点の大きさの平均値を所定の閾値と比較する.評価結果生成部は,平均値が所定の閾値より大きい場合に深い眠りの質が悪いと判断し,そうでない場合に深い眠りの質が良いと判断することができる.いくつかの実施形態において,評価結果生成部は,重複波の前縁の勾配の大部分が(例えば,75%より多くが)正の値であるかどうかを判断する.評価結果生成部は,勾配の大部分が正の値である(すなわち,複数の重複波がある場合に,その前縁のほとんどが明らかに上昇している)と判断された場合に血管弾性が良いと判断し,そうでない場合に血管弾性が悪いと判断する.
【0045】 図8及び図9のそれぞれには,第1のフィルタリングされた波形の一部が例示的に示されており,重複切痕W21,重複波W22,拡張期の底P1,収縮期のピークP3,及び切痕点P4が表記されている.一実施形態において,大きさにおいて収縮期のピークP3から離れている切痕点P4を有し,前縁の勾配がそれぞれ正の値である重複波W22を有する図8に示されている波形に関して,評価結果生成部は深い眠りの質と血管弾性とが共に良好と判断する.一実施形態において,大きさにおいて収縮期のピークP3に近い切痕点P4を有し,勾配がゼロに近い前縁を有する重複波W22を有する図9に示されている波形に関して,評価結果生成部は深い眠りの質と血管弾性とが共に悪いと判断する.
【0046】 いくつかの実施形態によれば,ステップ29において,プロセッサ123の評価結果生成部は,波形セグメントのそれぞれに対して,複数の重複切痕が波形セグメントに存在するかどうかをさらに判断し,少なくとも一部の波形セグメントが複数の重複切痕を含む場合に深い眠りの質が悪いと判断する.図10には,第1のフィルタリングされた波形の一部が例示的に示されており,重複切痕W21,重複波W22,拡張期の底P1,収縮期のピークP3,及び切痕点P4が表記されている.一実施形態において,プロセッサ123の評価結果生成部は,パルス周期に対応する単一の波形セグメントに複数の重複切痕W21を有し,且つ,ほとんどの重複波W22の前縁の勾配が正の値ではない図10に示されている波形に関して,深い眠りの質が悪く且つ血管弾性が悪いと判断する.
【0047】 なお,上述のように,他の実施形態において,プロセッサ123のフィルタリング部と波形セグメント特定部と滑らかさ判断部と検知結果生成部と評価結果生成部とは,コンピュータ可読記憶装置や処理装置120が含み得る記憶モジュールに格納される命令として実現されてもよく,プロセッサ123が該命令を読み出して実行し,本明細書に記載された動作を実現するように構成することも可能である.
【0048】 要約すると,本考案のシステム100を用いれば,中医学における特定の症候群(例えば,肝火上炎,心火上炎)並びに血管弾性と深い眠りの質とを,血行力学センサ110により生成された血行力学データに基づいて検知することができ,診断を下すためのより客観的な手段を提供することができる.本考案のシステム100は,医療機関だけではなく一般家庭でも使用することができ,一般人が自分の健康状態を知ることができるようにし,治療を受ける際に補助的な情報を提供することができる.
【0049】 上記の説明では,説明の目的のために,実施形態の完全な理解を提供するために多数の特定の詳細が述べられた.しかしながら,当業者であれば,一又はそれ以上の他の実施形態が具体的な詳細を示さなくとも実施され得ることが明らかである.また,本明細書における「一実施形態」「一つの実施形態」を示す説明において,序数などの表示を伴う説明は全て,特定の態様,構造,特徴を有する本考案の具体的な実施に含まれ得るものであることと理解されたい.更に,本明細書において,時には複数の変化例が一つの実施形態,図面,又はこれらの説明に組み込まれているが,これは本明細書を合理化させるためのもので,本考案の多面性が理解されることを目的としたものであり,また,一実施形態における一又はそれ以上の特徴あるいは特定の具体例は,適切な場合には,本考案の実施において,他の実施形態における一またはそれ以上の特徴あるいは特定の具体例と共に実施され得る.
【0050】 以上,本考案の実施形態および変化例を説明したが,本考案はこれらに限定されるものではなく,最も広い解釈の精神および範囲内に含まれる様々な構成として,全ての修飾および均等な構成を包含するものとする.
【0051】 100 システム 110 血行力学センサ 111 第1の接続モジュール 112 血行力学センシングモジュール 120 処理装置 122 第2の接続モジュール 123 プロセッサ 124 出力モジュール |
縮圖尺寸
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